企業組織がWebサイトを運用するうえで更新作業の負担は悩ましい問題です。Webサイトの運用には専門知識やノウハウが必要なため、情報システム部などのIT担当者に更新作業が集中してしまうケースが少なくありません。また、CMS導入がされているページでも「操作性が悪く使いにくい」「画面インターフェースがわかりにくく編集作業が難しい」といった声が上がるケースもあるようです。本記事では、CMSの種類や導入のメリットと課題、企業利用でも簡単に使えるCMSの条件や、運用が簡単なクラウドCMSの利用について解説します。
この記事のポイント
- CMSの導入は、専門スキルを不要とし、属人化を防止、内製化によるコスト削減も可能にする
- 簡単に運用できるCMSの条件は、更新・管理・セキュリティ対策の手間が少なく、整備されたインフラ環境とサポート体制が整っているサービス
- 条件を満たすCMSは「クラウドCMS」
そもそもCMSとは、Webサイトのコンテンツを管理するシステムのことです。HTMLやCSSなどのプログラミング知識がなくても、ホームページやオウンドメディアの管理が容易になります。技術的なハードルが解消されるため、Webサイト運用の効率化が可能です。
CMSの種類には、無料で使えるものから有料のサービスまでさまざまなものがあります。また、オープンソース型やパッケージ型、クラウド型のCMSといった種類があり、自社の運用に合わせたCMSを選択できます。
オープンソース型とは、プログラムのソースコードが無償で一般公開されているソフトウェアのことです。誰もがソースコードを改変したり再配布したりできます。オープンソース型のCMSは、無償で利用できるため低コストで利用できることや、自社に合ったシステムに改良できることがメリットです。主に、オンプレミス環境やレンタルサーバーで活用されています。ただし、自社でセキュリティ対策やメンテナンスをしなければならないことや、サポートなどがないというデメリットもあります。
パッケージ型は、ベンダーが開発・提供しており、ユーザーはライセンスを購入して利用します。パッケージ型のCMSは、オープンソース型のCMSと比べてコストがかかり、ソースコードを自社で改変することはできません。しかし、セキュリティ対策やシステムのアップデートなどをベンダーに任せられることや、公式サポートが受けられるというメリットがあります。
ベンダーがクラウド上にサーバーやネットワークなどのインフラとCMSを用意し、インターネット接続ができればどこからでも利用できるのがクラウド型の特徴です。ユーザーはサーバーやソフトウェアを用意する必要がないため、オープンソース型やパッケージ型に比べて導入の手間が大幅に低減します。カスタマイズ性や機能付与、デザインの変更には制限があるものの、インフラやソフトウェアの管理・保守、セキュリティ対策をベンダーが行ってくれることや、障害などのインシデントに対して迅速に対応してくれるなどのメリットがあります。
クラウドCMSについては、「クラウドCMSって何?その特徴や選定ポイントなどを詳しく解説」詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
CMSの活用目的は、企業によってさまざまです。一般的には、コーポレートサイトや製品紹介、オウンドメディアやECサイトなどが挙げられますが、用途によってその所管部署も異なります。
また、CMSの導入については、所管部署がWeb制作会社からの提案を受けて独自に決定することもあれば、統括部門主導で選定されることもあります。
以下の表は、CMSの利用用途と所管部署との関係の一例です。
目的 |
所管部署 |
コーポレートサイト |
経営企画、広報 |
製品・サービスサイト |
マーケティング、営業 |
サステナビリティ |
広報、IR、サステナビリティ |
IRサイト |
IR |
採用サイト |
人事 |
所管部署がそれぞれの利用目的に合わせてCMSを選定するケースもよくあるようです。しかし、企業全体でみると管理面やWebガバナンスの統一が難しくなる原因にもなります。システムやインフラが複雑になるため管理コストが増大したり、セキュリティレベルがバラバラになってしまったりと、さまざまな弊害の原因になってしまうのです。
Webサイト運用の統括部署がCMSを選定する場合は、システムやインフラの複雑化を防げる一方で、各所管部署の目的を考慮しながら、機能性や操作性の良さを兼ね備えたCMSを選定し、サイト編集に慣れていない部署でも内製化ができるように配慮する必要があります。
企業がCMSを導入することで、さまざまなメリットを享受できます。ここでは、主な4つのメリットをみていきましょう。
CMSを導入することで、HTMLやCSSといったプログラミング言語などの専門スキルがなくても、コンテンツの更新や追加作業を行えるようになります。CMSがターゲットにしているユーザーによってできることは異なるため、学習コストがかからないように、目的に応じたCMSの選択が必要なことは言うまでもありません。
操作性がよく使いやすいCMSを導入すれば、その分社内で更新作業が分担しやすくなります。また、企業では異動や退職もつきものです。「あの人が退職したのでWebサイトの運用ができなくなった」などという問題が起こらなくなり、属人化によるサイト更新の停滞を防止できます。
CMSがPC以外のデバイスにも対応していれば、Webサイトのコンテンツをさまざまなデバイスに合わせた形で表示できるようになります。これをマルチデバイス対応と言い、テキストや画像などのデータを、PCやスマートフォン・タブレットなどの異なるデバイスの画面サイズに自動対応してくれます。
CMS導入は、Webサイト運用を内製化させることでもあり、外注コストを削減できるのも大きなメリットです。特に、コンテンツの更新や追加は内製化しやすい作業となります。たとえば、Webサイト運用に代行サービスを利用している場合、コンテンツの更新作業として、HTML編集やサーバーアップロードにもコストがかかります。こうした作業がCMS上で実現し内製化できればコスト削減だけでなく、代行サービスに対して指示出しやチェックなどのやり取りをする時間と手間を省くことにもつながります。
Webサイト運用の代行については、【Webサイト運用の代行サービスとは?代行すべきか内製化すべきかの判断方法】にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
さまざまなメリットがあるCMSですが、導入した際の課題もあります。ここでは、主な4つの課題についてみていきましょう。
CMSの種類によっては、多機能で編集上の選択肢が幅広いものもあります。このようなCMSを導入した場合、機能や操作の把握が難しいと感じるかもしれません。たとえばオープンソース型のWordPressでは、固定ページや投稿ページなどを意識的に選択して更新・編集作業をする必要があります。無料・有料で配布されているテーマ選びも自由度が高いため、使いこなせるようになるまでに時間がかかることもあります。このように、学習コストがかかるCMSを導入すると、スキルのある人材に作業が集中してしまい、CMSの社内定着を妨げ、属人化を起こしてしまいます。
CMSの操作に慣れていない場合、コンテンツの更新・追加作業に時間がかかってしまうこともあります。直感的にわかりにくい操作のCMSでは、それが顕著に現れるでしょう。このため、CMS検討にあたっては、サイト運用に参加するメンバーのスキルや「Webサイト運用に慣れているかどうか」という点も踏まえて、CMSの管理画面が無理なく使いこなせるものであるか判断することが重要になります。
オープンソース型のCMSを導入した場合、自社でセキュリティ対策を講じなければならないという課題もあります。セキュリティ対策には専門的な知識とノウハウが必要です。また、サイバー攻撃の手口は無数にあるといっても過言ではありません。常に最新の情報を得て対策を講じなければならないのです。
総務省では、サイバーセキュリティ上の脅威の増大として、以下のように述べています。
NICTが運用している大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)が2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数(約5,226億パケット)は、2015年(約632億パケット)と比較して8.3倍となっているなど、依然多くの攻撃関連通信が観測されている状態である
※引用元:第2部 情報通信分野の現状と課題 総務省
CMSの主なセキュリティ対策はシステムやプラグインのアップデート作業になりますが、それがどのようなアップデートであるか、既存のシステムに影響がないかを確認しながら脆弱性をカバーしていかなければならず、担当者に多大な負担がかかります。
すでにWebサイトを運用している、あるいは部署ごとに複数のWebサイトが存在する場合、それら既存サイトをCMSへ移行する作業には手間と時間がかかります。既存システムの構成やデータを詳細に洗い出し、新しいCMSへ移行する際に起こり得る問題や、移行できない部分の分析が必要です。また、移行前には既存サイトをバックアップしたり、載せ替えるコンテンツの範囲や順序を綿密に計画したりしなければなりません。このような場合は、複数のWebサイトを簡単に移行して、一元管理ができるサービスを選定することが、課題解決の第一歩となります。
CMSを導入する際には、機能がわかりやすく操作性の良いものを選択して、誰でも簡単に運用できるものを導入することが大切です。ここでは、サイト運用に慣れていない人でも扱えるCMSの条件をみていきます。
簡単に運用できるCMSの条件には、更新や管理の手間、操作に不安要素の少ないものが挙げられます。
触れば感覚的に使える、直感的に操作できる画面インターフェースならば、サイト編集に慣れていない人でも「使いやすい」と感じるはずです。多機能でもシンプルな操作画面で、使いたい機能がすぐわかるように設計されたCMSが最適だといえます。
たとえば、編集作業を行うときに、たくさんの操作選択肢があるものは、豊富な機能を有しているようにみえる一方で、操作手順が複雑になります。不用意に触ると意図しない動作をするような「触ってはいけないボタン」があるCMSは、サイト運用に慣れていない人にとって操作ハードルが高くなりますし、編集時のヒューマンエラーを助長する原因にもなります。
そのため、可能な限り心理的障壁を取り除いた、操作しやすいインターフェースのCMSを選ぶことが大切です。
セキュリティ対策の手間が少ないCMSは、簡単に運用できるCMSの条件に挙げられます。
たとえば、オープンソース型のCMSなどは、セキュリティ対策の知識や手間がかかるため、サイト運用に慣れていない人にとって使いにくいCMSです。先述したように、サイバー攻撃は日々増加傾向にあります。そのため、セキュリティ対策は負担のかかる作業です。専門知識や経験、ノウハウも必要ですので、Webサイト運営に慣れていない人にとって使いにくいCMSだといえます。
Webサイトを運用するために欠かせないサーバーやネットワークなどのインフラが整備されているCMSも、条件に挙げられます。
コンテンツの更新・編集だけではなく、インフラ環境の管理・保守まで行わなければならないCMSを運用するには、ITインフラの豊富な知識と経験が必要です。そのため、インフラ環境を意識せずにWebサイト運用ができるCMSは、簡単に運用できるCMSの必須条件だといえるでしょう。
Webサイトに急遽トラブルが発生した場合に、迅速なサポートを担ってくれるCMSは、安心して利用できる条件の一つです。また、操作がわからない、この機能が使いたいなどの要求に対してサポートしてくれるサービスであることも、Webサイト運用をする際の安心につながります。そのため、サポート体制が充実した提供事業者を選定することも大切です。
簡単に使えるという条件を前提にしたCMSならば、クラウドCMSを選択すると良いでしょう。インフラ管理やセキュリティ対策は事業者に任せ、情報更新だけに専念することもできます。ただし、Webサイト運用を代行するだけの事業者ではなく、内製化も視野に入れた複合的な支援をしてくれるクラウドCMS提供事業者を選ぶことが大切です。
たとえば、クラウドCMS「ShareWith」は、企業利用に特化した機能を標準で備えています。基本的にシステム開発をする必要はなく、簡単な操作でコンテンツを編集できる作りになっているため、更新業務の内製化を見越したCMS導入が可能です。サイト更新作業が簡単に行えるため、各部門や部署に安心して情報更新作業を任せることができるでしょう。
もちろん、インフラ管理やセキュリティ対策などの手間がかかる作業はアウトソースできるため、担当者の負担も軽減できます。
クラウドCMSで社内運用課題を解決した事例については「【Webサイト運用事例】社内運用における課題をクラウドCMSで改善した事例を紹介」で解説していますので、あわせてご覧ください。
誰もが簡単に使えるCMSを選定して導入することで、Webサイト運用に慣れていない方でもコンテンツの更新作業がしやすくなります。使いやすいCMSの条件を満たしたサービスならば、内製化も視野に入れた体制作りが可能です。可能な限りサイト運用担当者の負担軽減を考慮し、誰もが安心して使えるクラウドCMSの導入を検討しましょう。
簡単に使えるクラウドCMS「ShareWith」の管理画面と運営サポートについては、こちらをご覧ください。
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