自社のWebサイトやオウンドメディアなどのコンテンツで顧客との接点を持つのは一般的な手段となりました。複数のサイトを管理している企業も増えています。そこで重要なのがWebガバナンスの構築です。複数のサイトを管理している場合は、コンテンツを管理するCMSも複数になるため、企業の管理責任者は、「Webガバナンスは必要だと思うが、どこから手を付けたらよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、Webガバナンスの基礎知識やそのメリットを交えながら、Webガバナンスを成功させるポイントについて解説します。

この記事のポイント

  • Webガバナンスは、企業のWebサイトの運営と管理を統括する体制、仕組みのこと
  • Webサイトで重要なことは、企業のブランドイメージやアイデンティティを統一しておくこと
  • Webガバナンスは、インフラ設備への投資コストや運用体制の構築などを統制するために不可欠
  • Webガバナンスを実現できない理由の多くが「複数のCMSやインフラの混在」
  • 大規模化して複雑化したサイトをまとめて管理できるプラットフォームを活用するのが解決の鍵

Webガバナンスとは

Webガバナンスとは、企業のWebサイト運営と管理を統括する体制、仕組みです。
企業のイメージや信頼性、マーケティングの効率やセキュリティ、ユーザーニーズへのマッチなど、さまざまな要素に影響します。特に、企業で複数のWebメディアを運営している場合は、Webガバナンスを全社に浸透・定着させて、Webサイトを運営・保守していくことが重要です。


さらに、WebガバナンスはWebサイトを支えるインフラ設備の統一性やコストにも大きく影響します。企業として、Webサイトやオウンドメディア、SNSなどを運営している場合、Webガバナンスを構築することは欠かせません。
実際に、大企業グループサイトのIT担当者・Web責任者は、Webガバナンスに悩みを抱えています。自社グループで所有しているWebサイト数についての調査では次のような結果が出ています。

 

大企業のIT担当者・Web責任者が「Webガバナンス」に抱える悩み」(調査:ゼネラルリサーチ/野村インベスター・リレーションズ株式会社)


半数以上の企業が6サイト以上を保有していることがわかります。このうち、9割がWebガバナンスの必要性を認識しながらも、3割以上が実現できていないという回答でした。

 

WebガイドラインやWebレギュレーションとの違い

Webガバナンスに似た用語に、WebガイドラインやWebレギュレーションがあります。混同してしまいがちですが、まずは、Webサイトを統括するWebガバナンスが軸となることを意識し、そこからWebガイドラインやWebレギュレーションが策定されるべきであることを理解しておくことが大切です。


まず、Webガイドラインは、Webガバナンスを実際のWebサイトやコンテンツに反映させる手段です。Webサイトの構築はどのようなポリシーで行うのか、運用はどのようなルールで行うのかなどをまとめます。たとえば、Webサイトのレイアウトのパターンや文体、フォントやボタンの形などをルール化しておくことで、複数のサイトを運営する場合でも統一感のあるWebサイトの構築が可能になります。


Webレギュレーションは、Webサイト構築をする際の仕様のことです。たとえば、広告を掲載する際の規制や規約、個人情報保護に関するレギュレーション、サイトに載せる記事を執筆する際のターゲット層の決め方や構成の作成手順、細かい部分では文章の文体などのルールが挙げられます。
経営層やマネジメント層は、Webガバナンスをもとにして、WebガイドラインやWebレギュレーションを策定し、現場で実践してもらうように務めなければなりません。
 

Webガバナンスが必要とされる理由

企業のWebサイトやSNSは、マーケティングやブランディングのツールという役割も持っています。ターゲットとなるユーザーのニーズをつかむことで、Webサイトを介して接点を持つことができるのです。
このような役割を果たす企業のWebサイト、コンテンツで重要なことは、企業のブランドイメージやアイデンティティを統一しておくことです。さらに、企業全体で運営しているWebサイトへの投資効率を向上させ、コストはおさえるといった意識が欠かせません。


ここでは、Webガバナンスが必要とされる主な理由をみていきましょう。

ぶれのない情報発信を行うため

Webガバナンスがない場合、各Webサイトを各部署やグループ会社などが、独自のルールで運用することになります。バラバラに運営されるWebサイトは、管理する担当者の主観によってサイトが構築されるため、一貫性や統一感が欠如し企業の発信内容がぶれてしまうことがあります。また、同じ企業のWebサイトであるにも関わらず、デザインや文章などコンテンツの統一感が失なわれ、ユーザーに違和感や不信感を抱かせる可能性があるのです。

 

関連のあるWebサイトとも連携ができていないために、ユーザーニーズに応えられないケースが出てくるでしょう。これは、ユーザー獲得の機会損失にもつながります。

インフラの重複投資を抑えるため

サーバーなどのインフラ設備に関しても、各自がさまざまなサービスと契約して運用するため、リソースが分散してしまう可能性が高くなります。それは、重複投資による運営コストの増加につながります。蓄積するデータも分散されるため、せっかくの企業資産であるデータを分析などに活用できない可能性も高くなるのです。

Webガバナンスを構築するメリット

Webガバナンスを実現することで、企業が運用するWebサイトに一貫性を維持して運用するとともに、インフラ設備への投資コストや運用体制の構築などを統制できます。ここでは、Webガバナンスを構築するメリットをみていきましょう。

企業のブランドイメージを構築できる

WebガバナンスによってWebサイトに一貫性を持たせることができると、ユーザーに企業のイメージを定着させ、企業のコンセプトへの共感を獲得することにも役立ちます。
企業のブランドイメージ構築には、ユーザーがどのWebサイトを訪れても、一貫したイメージやメッセージを感じ取れることが重要です。

インフラの集約でコスト削減

複数のWebサイトを運営する企業では、Webサイトごとにインフラリソースが分散していることがあります。


それは前述したように、部署やグループ会社がそれぞれに、サーバーやネットワークなどのインフラを契約しているなど、役割や目的によってバラバラで整理されていない状態で、情報の分散や重複投資の原因になっています。

 

Webガバナンスを軸としてインフラ全体の最適化を図り、分散しているインフラを整理して統一するなどの最適化を行えば、インフラ設備に関するコストを削減できます。インフラの統一は、分散されているデータも統合し、企業の資産として蓄積する仕組みを作ることも可能です。

セキュリティリスクの低減

Webガバナンスに基づいてセキュリティ対策を実施することで、セキュリティリスクの低減につながります。


Webガバナンスでは、Webサイトを安全に運用するためのセキュリティ対策を整備します。たとえば、システムやソフトウェアを定期的に更新することやセキュリティポリシーを策定する仕組みです。


これらを遵守することで、Webサイトからの情報漏えいのリスク、サイト自体の脆弱性リスクを低減できるため、企業全体のWebサイトに対するセキュリティ水準を高い状態に保てるのです。


たとえば、データ保護やリスク管理をWebガバナンスに沿って実行すれば、Webサイトの信頼性が高まります。それに比例して企業全体の信頼性の向上にもつながります。

Webガバナンスが実現できない理由

Webガバナンス構築の重要性がわかっていても、実現できない企業が多いのは事実です。その理由は何なのでしょうか。


大企業グループのサイトにおけるセキュリティ・インフラ統合の課題」に関する調査では、次のような理由が挙げられました。

 

 

多くの企業が「複数のCMSやインフラの混在」を理由に挙げていることがわかります。


それぞれの部門が独自にWebサイトを構築すれば、企業としての一貫性を出すことは難しいでしょう。その結果、同じ企業内やグループ会社であるにもかかわらず、それぞれ独自の判断でCMSやサーバーなどのインフラを選定して契約してしまうため、多様なシステムやインフラが混在してしまいます。整理して統合したいと思っても、Webインフラの移設をするためには現状把握や移行計画、要件定義などの多くの作業とコストが掛かるため、なかなか進めることができないというジレンマに陥るのです。


また、経営層やマネジメント層がWebガバナンスの重要性を理解していなかったり、Webガバナンスを知っていても活用方法や手段がわからず、Webサイトの統制や集約にうまく役立てられていなかったりすることも理由に挙げられます。


Webガバナンスを実現するためには、Webサイトの作り方や運用のルールを作るだけで十分ではありません。多数のサイトを一元的に統合・管理する環境を作ること、そして経営層やマネジメント層をはじめ、全社にWebガバナンスが浸透していることが大切なのです。

Webガバナンス成功のポイント

Webガバナンスを成功させるには、全社で取り組むことが何よりも大切です。ここでは、Webガバナンスを成功させるポイントをみていきましょう。

 

全社でメリットを理解する

Webガバナンスを成功させるためには、そのメリットを、経営層をはじめとした全社で理解する必要があります。Webサイトのクオリティや品質は、企業のブランドイメージやユーザーからの信頼、サービスの品質に直結するほど重要なものであり、企業経営そのものにダイレクトに関わってくるものだからです。Webガバナンスを全社的に浸透させることは、企業経営の一環だと考えてもよいでしょう。


Webガバナンスを全社で理解するためには、業務遂行の判断基準やルール明確化してわかりやすく伝え、皆がいつでもWebガバナンスを共有できる環境を作らなければなりません。そのためにも、Webガバナンスの重要性やメリットを資料化することが効果的です。情報発信やインフラ、セキュリティにおける自社の課題や、その解決により得られるメリットをわかりやすく資料化することで、全社での社内教育としてWebガバナンスを浸透させやすくなります。


目的やゴールを共有することができていなければ、Webガバナンスが目指すところも、その必要性もわかりません。その結果、「Webガバナンスは経営層や親会社が押し付けてきた新たな決まり」程度にしか認識されず、全従業員にとってメリットがあることを理解してもらえない可能性が高いのです。

 

Webガバナンスを意識した活動が、経営層やマネジメント層を含めた全従業員にとってメリットがあることを実感してもらうことは、Webガバナンスを成功させるために最も重要なポイントだといえます。

Webガバナンスを定着させるための体制をつくる

Webガバナンスのメリットを全社で理解できたら、定着させるための体制をつくります。単に「Webガバナンスを浸透させます」という目標を立てても、実際に実行するリソースや手段がなければ運用できないためです。


運用するチームでは、Webサイトの作成ルールづくりや、サイト運用のリソース調整、コンテンツ全体のインフラ運用ルール作成などの、担当者を決めていきます。Webサイトが複数存在する場合は、それぞれを担当するリーダーとメンバーの構成が必要です。


役割と責任を明確化することで、確実に進めていくことができるでしょう。体制づくりはWebガバナンス成功に欠かせないポイントです。

手順などを明確化する

Webガバナンスを構築して活用する上で必要なのは、Webサイト作成などの手順を明確化することです。


Webガバナンスを軸にして、統一性や品質担保、セキュリティ対策やインフラコストを意識したWebサイトづくりのプロセスを明確化することで、複数のWebサイトに一貫性と効率性をもたらすことができます。具体的には、前述したWebガイドラインやWebレギュレーションを整備します。


たとえば、Webサイトならば、作成や更新、公開やコンテンツの削除などをする場合の手順を統一し、Webガイドラインとして共有しておきます。複数のWebサイトがあっても、手順をしっかりと確立しておくことで、統一性のあるコンテンツを作成することが可能です。

運用サイトを見直し、新しいWebサイトの導入や既存のWebコンテンツを集約する

手順を明確化したら、既存のWebサイトがその手順に沿った作りになっているか、一貫性や品質が担保されているかなどの見直しを行います。新しいWebサイトの構築が計画されている場合は、Webガバナンスを遵守するために、既存のWebサイトなどコンテンツと一緒に運用・管理ができるよう、できるだけ集約させましょう。


手順に沿って、運用中のシステムを集約することで、Webガバナンスを軸として統一されたWebサイトやコンテンツが構築できます。


Webガバナンスを実現することは、実際には多くの手間や労力が必要で、非常に難しいことです。Webガバナンスを策定して全社に浸透させるなど、ここまでに紹介してきたことを実践するには、現実的な課題も多いでしょう。これらを解決してWebガバナンスを実現させるためには、Webサイトを構築するプラットフォームやインフラはよりシンプルであることが重要です。
たとえば、多種多様なサイトを、運営形態をそのままに集約できる「ShareWith群」は、大規模化して複雑化したサイトをまとめて、シンプルに管理したり、まとめることにより一定水準のセキュリティを担保したりすることが可能です。その他、Webコンテンツの運用や保守などさまざまな課題を解決できるプラットフォームとして活用できます。

まとめ

Webガバナンスは、企業におけるマーケティングやブランディングにおいて欠かすことはできません。Webサイトなどのコンテンツを適切に構築・運用するための統一された仕組みは、一貫性のあるコンテンツの整備やインフラの集約によるコスト削減、セキュリティ水準の統一や品質の安定などに大きく関わります。Webガバナンスを構築して成功させるポイントをおさえ、全社的なWebコンテンツの統制・管理を実現させましょう。


大規模になり複雑化したサイトをひとつにまとめて運営できるプラットフォームの「ShareWith群」は、Webガバナンスを構築する際の課題や手間も軽減してくれます。

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