コーポレートサイトをはじめとしたWebサイトの作成において、CMSを利用する企業が増えています。多くの企業が従来採用している代表的なものとしてはWordPressなどがありますが、近年注目を集めているのが「クラウドCMS」です。しかし、サイトの運営担当者の中には「クラウドCMSって具体的に何なの?」「クラウドCMSを選択する理由には何があるの?」という疑問を持つ方も少なくありません。本コラムでは、そもそもクラウドCMSとは何なのか、クラウドCMSとは何を提供してくれるサービスなのかを交えながら、クラウドCMSの選定ポイントや費用感ついて解説します。

クラウドCMSとは?

クラウドCMSとは、Webサイト運用・管理に必要なCMSの機能をWebブラウザ上でだれもが手軽に利用できるクラウドパッケージで、クラウドで使えるソフトウェア(SaaSという種類のクラウドサービス)として提供されているCMSのことです。
 
従来CMSは、調達したサーバにインストールし、必要に応じてカスタマイズ開発する、「制作物」でしたが、クラウドCMSは、一般的なクラウドサービスと同じように、自社の運用方法に合わせて選んで使えるCMSといえます。
料理に例えるならば、スーパーで食材を買ってきて、食べたいこだわりの料理を「調理」するのではなく、食べたいものを決めて、専門店から「完成した料理」を配達してもらって食べるようなイメージです。もちろん、自分好みのメニューがあるお店を選べます。


実際のビジネスにおける業務利用では、メールをイメージするとわかりやすいでしょう。
例えば、従来のメールの多くは、自社が契約しているインターネットプロバイダが提供するメールサービスを利用していました。さらに、そのメールサービスを利用するために、パソコンにメーラーと呼ばれるソフトウェア(Outlookなど)をインストールしたり、メールの送受信設定をしたりと、ユーザーが利用するまでに手間がかかっていました。
しかし近年では、GmailやYahoo!メールなどといったメールのクラウド化が進み、ユーザーがこれらをサービスとして選択できます。これにより、自社でメーラーの用意や設定をする必要もありませんし、どこにいてもインターネットとパソコン(あるいはモバイルデバイス)があればメールを利用できるようになりました。


これと同じように、CMSも、自社でシステム構築や管理・保守をすることを前提とせず、クラウドCMSとして提供されているサービスの中から選び、手軽にCMSの導入と運用ができる時代になったのです。
このように、自社Webサイトの目的に沿った機能と、使いやすさを備えたCMSを選び、そして手間をかけずにサイト作成が可能なサービスがクラウドCMSだといえます。


クラウドで利用できるCMSと対比し、自社でシステム構築をするタイプを「オンプレミス型CMS」と呼ぶこともあります。2つの違いについてはCMS導入でクラウド型・オンプレミス型かはどう判断すればいい?で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

そもそもCMSとは

そもそもCMSとは、「Contents Management System」の略称で、管理や編集に高度な専門知識を要するコーポレートサイトなどのWebサイトや、ブログなどの運営に必要な機能を提供するシステムの総称です。WordやExcelなどのようにソフトウェアとしてパッケージされたものが一般的ですが、複雑な動作仕様を実現するために、全くゼロから開発して利用されるものもあります。


CMSについては今さら聞けない。ホームページで使う「CMS」ってそもそも何?で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

クラウドCMSの特長

また、自社でCMSを構築する場合、高い精度で目的を達成しようと、「細かな、複雑な要望を仕様に反映したCMS」にしてしまう傾向があります。つまり、CMSの構築自体が目的になりがちになるということです。しかしクラウドCMSは、Webサイトの目的や、実際にCMSを操作する担当者のスキルを踏まえて選ぶだけ。過剰な開発検討に陥ってしまうことなく、目的から逆算して手早く「仕組み」を手に入れることができるのです。


ここに挙げた特長の他にも、クラウドCMSを利用するメリットやデメリット、そして詳しい機能については、企業組織でクラウドCMSを導入するメリット・デメリットとは?で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

クラウドCMSを利用する理由

それでは、クラウドCMSを利用すべき理由をみていきましょう。
まず、クラウドCMSを利用すれば、自社の運用体制・目的に合ったCMSを、ユーザーである企業自身が選択できるようになります。従来のカスタマイズを前提としたCMSは、ユーザーの使い勝手よりも、開発する制作会社の扱いやすさ、つまり技術者の確保のしやすさが「選ばれる理由」であり、現実的に“選ぶことができる”のは提案するWeb制作会社でした。クラウドCMSは、上述したとおり、使い勝手やサポート面を比較してメールサービスを選択するのと同じ感覚で、CMS提供事業者を選べるということです。

 

次に、CMSの操作性の良さが挙げられます。クラウドCMSを提供する事業者は、企業のニーズを捉え、様々な目的に応えるサービスを開発していますから、管理画面もユーザーが最も便利に使いやすいインターフェースになるよう設計されているのです。


例えば、コーポレートサイトの更新やページの追加などを外注に頼らず内製化、部門で分業化したい場合、ITリテラシーに関わらず誰でも使える管理画面のわかりやすさが重要になります。この場合、クラウドCMSの中から、最もユーザーが安心して使える操作性を持ったサービスはどれか、という観点でCMSを選択していけばよいのです。


このように、クラウドCMSは、カスタマイズ性など開発の都合に左右されず、利用する企業側が主体となって選択ができるため、最短距離でWebサイトの目的を達成できることが、クラウドCMSを利用すべきだといえる最大の理由です。


クラウドCMSを使った企業サイトの内製については、クラウドCMSが企業サイト内製化のカギで詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
 

クラウドCMSの費用ってどれぐらいかかるの?

では、実際にクラウドCMSを利用する際には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。


具体的な金額としては、月額10,000円程度~300,000円程度とサービスによって幅があります。さらに、各クラウドCMSでも、サイトのページ数や使用するサーバ容量、利用するアカウント数やオプション機能などによってプランが提供されていることがほとんどです。自社のWebサイトに必要な機能・スペックが明確であれば予算の想定はしやすいでしょう。


例えば、コーポレートサイト向けクラウドCMSのShareWithの費用を参考にすると、以下のようなプランがあります。

 

  • コンパクト:120,000円~/月額
  • スタンダード:148,000円~/月額
  • レジリエンス:248,000円~/月額
     

※最新のプラン料金については、ShareWithのプランをご確認ください。

クラウドCMSを導入する際に押さえておきたいポイント

それでは、クラウドCMSを導入する際に押さえておくべきポイントをみていきましょう。

 

導入実績

クラウドCMSを選択するポイントの一つとして、提供事業者の導入実績が挙げられます。
例えば、企業のコーポレートサイトを構築することが目的であれば、コーポレートサイトの導入実績を確認しましょう。導入企業が何社くらいあるのか、またどのような企業が導入しているのかをチェックします。

 

セキュリティ対策

クラウドを利用する際には、やはりセキュリティへの配慮が必要ですので、その事業者がどのようなセキュリティを施しているのかもチェックポイントになります。


例えば、公開サーバーと管理サーバーを分けて運用していたり、管理画面にIP接続制限をかけたりする対策はサイバー攻撃にも有用です。また、自動バックアップやデータセンターの分散などが施してあれば、BCP対策としても安心できる要素となります。

 

カスタマイズ性

クラウドCMSの特徴の一つは、専門的な知識がなくてもコンテンツを作成できることです。しかし、簡単な操作で利用できるということは、その分ユーザーによるカスタマイズ性を犠牲にしている場合ももあります。
自社の独自性を出すためにも、様々なレイアウトや演出などに対応できるかどうかは重要な要素です。自由なカスタマイズでサイト作成ができるか否かもクラウドCMSの選定ポイントといえるでしょう。

管理画面のわかりやすさ

クラウドCMSの操作性や、ユーザーインターフェースが実際に利用するユーザーにとってわかりやすいものかどうかも重要な選定ポイントです。


専任を付けるなど、特定のユーザーしか使わない前提ならば、管理画面が“ユーザー・フレンドリー”かどうかは、さほど大きな問題にはならないかもしれません。しかし、会社には人事異動という仕組みがあり、システム操作が得意ではない人材もいます。Webサイトが会社のものである限り、「誰でも操作ができること」は、持続的な運営体制を作っていく上で必要不可欠な要素だと言っても過言ではないでしょう。


また、組織で使う限り、複数人でも同じページを同時に編集できたり、逆に、特定の部署のみ更新がが行えるようにアクセス制限を施せたりするなど、自社の運用方針にマッチした使い方ができるかどうか、という視点も大切です。

サポート体制

管理画面を実際に操作するユーザーにとって、クラウドCMSの提供会社によるサポートは、滞りないサイト運営の実現のために必要不可欠なサービスです。


操作中に「このようなことがしたい」という要望や、思い通りに操作ができなくなったなどのトラブル、あるいはサイト自体が表示できなくなったなど、運用中にはユーザーが自己解決できない様々な困りごとが必ず出てきます。クラウドCMSに、遠慮なくすぐに相談できるサービス体制があれば、操作に悩んで作業が止まったり、社内で詳しい人を探したり、といったストレスがなくなり、前向きな気持でサイト運営に臨むことができるでしょう。

レスポンシブWebデザイン対応の有無

サイトの閲覧は、パソコンだけとは限りません。スマートフォンやタブレットが普及した現代では、さまざまな端末サイズに自動的に変換する「レスポンシブ」なWebデザインであることが重要です。


クラウドCMSを選ぶ際にも、ユーザーが作成するページも含め、レスポンシブWebデザインに対応しているかどうかもチェックしましょう。

 

 

このように、クラウドCMSの選定にあたっては、Webサイトの目的やゴールを設定し、どのような運営メンバーが操作するのかを十分に把握した上で、各種ポイントを押さえていく必要があります。


また、国内の利用が前提ならば、管理画面の馴染みやすさや日本語のサポートがある国産のCMSを選択したほうがよいでしょう。国産CMSについては国産CMSを選ぶメリットとは?でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。

まとめ

クラウドCMSとは、Webサイトの管理・編集に必要な機能をクラウドで使えるソフトウェアとして提供しているサービスです。ブラウザで利用できるメールなどのクラウドサービスと同じように、自社のWebサイトの目的やユーザーに合わせて最適なCMSを選べるようになりました。クラウドCMSの特徴や導入ポイントを理解して、適切にクラウドCMSが選定できれば、従来CMSにはできなかった生産性の高いサイト運営が手軽に実現できるはずです。