CMS選定でよくある失敗は、候補製品を先に決めてから、自社の要件を当てはめることです。製品デモを見ると、どのCMSにも魅力的な機能があり、必要な機能と「あれば便利な機能」の区別が難しくなります。

 

CMS選定は、製品比較の前に、サイトの目的、現在の課題、運用体制、必要な統制、移行範囲を整理する作業です。本記事では、企業サイトのリニューアルで使えるCMS選定の手順を、評価表やデモ比較の方法まで含めて解説します。

 

この記事のポイント

  • 製品名を挙げる前に、目的・課題・運用体制を整理する
  • 要件はMust・Should・Couldに分け、重み付けする
  • デモは各社へ同じシナリオを依頼し、実務担当者が操作する
  • 費用は見積もり範囲をそろえ、5年間の総費用で比較する

CMS選定の全体像

CMS選定は、次の7ステップで進めると、製品の印象や知名度に左右されにくくなります。

 

  1. 目的と現状課題を整理する
  2. 利用者・承認者・保守担当を可視化する
  3. 要件をMust・Should・Couldに分ける
  4. CMSタイプと候補製品を絞る
  5. 評価表と配点を作る
  6. 同じシナリオでデモを実施する
  7. 見積もり・契約・移行リスクを比較する

STEP1:目的と課題を整理する

「サイトを新しくしたい」「古いCMSを入れ替えたい」だけでは、評価軸を作れません。現在の業務やリスクを、改善したい状態へ置き換えます。

現状の表現

具体的な課題

目標の例

更新しにくい

制作会社へ毎回依頼し、公開まで3営業日かかる

定型更新は社内で当日公開する

管理が複雑

CMS、サーバー、保守の窓口が分散

問い合わせ・障害対応窓口を整理する

セキュリティが不安

CMS更新が不定期で、対応状況を把握できない

継続的なアップデートと報告体制を整える

STEP2:運用体制を可視化する

CMSを使用する人だけでなく、サイト運営に関係する人を整理します。広報、IR、人事、事業部、法務、情報システム、制作会社、サーバー会社などが対象です。

 

次に、代表的な更新作業について、「原稿作成」「CMS入力」「確認」「承認」「公開」「公開後確認」を誰が担うかを書き出します。現状と理想の両方を作ると、CMSで解決すべき業務が明確になります。

STEP3:要件を優先順位付けする

要件は、次の3段階に分けます。

 

Must:必須

満たさなければ候補から除外する条件。例:部門別権限、二段階承認、SSO、特定のセキュリティ基準。

 

Should:重要

選定評価へ大きく影響する条件。例:見たまま編集、複数サイト管理、操作サポート。

 

Could:あると望ましい

将来利用する可能性がある条件。例:多言語追加、MA連携、パーソナライズ。

「すべて必須」にすると、候補が極端に少なくなり、個別開発が増えます。逆に優先順位がないと、営業資料で目立つ機能に評価が引っ張られます。

STEP4:候補を絞る

候補製品を調べる前に、SaaS型、パッケージ型、オープンソース型、ヘッドレス型など、どのタイプが自社の運用方針に合うかを決めます。

 

例えば、基盤保守を任せて標準化したいならSaaS型、独自開発を重視するならパッケージ・オープンソース・ヘッドレス型が候補になります。この段階で3〜5製品程度に絞ると、詳細評価を行いやすくなります。

STEP5:評価表を作る

評価表には、評価項目、重要度、配点、判定基準、根拠、確認状況を含めます。「○・△・×」だけでは評価者によって基準が変わるため、点数の定義も決めます。

評価項目

重要度

配点

判定基準例

確認方法

承認フロー

Must

10

自社の2段階承認を標準で実現

デモ

基盤保守

Must

10

監視・アップデート・復旧を契約範囲に含む

契約・資料

操作性

Should

8

担当者が研修後に定型更新できる

操作テスト

複数サイト

Should

7

権限とデザインを分けて管理できる

デモ・ヒアリング

外部連携

Could

4

将来のAPI連携が可能

仕様書

STEP6:デモを比較する

各社の標準デモを見るだけでは、操作性を比較できません。自社で頻度の高い作業をシナリオとして渡し、同じ条件で実演してもらいます。

 

  • 既存ニュースを複製して公開日を予約する
  • ページ内の画像とPDFを差し替える
  • 担当者が申請し、上長が差し戻し・承認する
  • 緊急時に公開中ページを修正する
  • 新しいカテゴリやサイトを追加する
  • 誤操作時に過去の状態へ戻す

 

デモには、管理職だけでなく実際の更新担当者も参加します。可能であれば、説明を受けた後に担当者自身が操作し、迷った箇所を記録します。

STEP7:見積もりとリスクを比較する

見積もりは、各社の対象範囲をそろえて比較します。CMSライセンスだけの見積もりと、デザイン・移行・サーバー・保守・サポートを含む見積もりを、そのまま比較してはいけません。

 

  • 初期設計・デザイン・構築
  • CMSライセンス・利用料
  • サーバー・CDN・監視・バックアップ
  • データ移行・リダイレクト・SEO移行
  • 操作研修・マニュアル
  • 保守・セキュリティ・バージョンアップ
  • 追加改修・サイト追加・容量超過
  • 解約・再移行時の費用

 

同時に、製品の提供終了、担当会社への依存、特定技術者の不足、データ移行の難しさなどのリスクも評価します。

よくある質問

  • CMS選定にはどのくらいの期間が必要ですか?

    候補調査から決定まで2〜4か月程度を確保するケースが一般的ですが、関係部門や調達手続きによって異なります。サイトリニューアル全体のスケジュールから逆算してください。

  • RFPは必ず必要ですか?

    複数社へ同条件で提案を依頼する場合は有効です。候補が少ない場合は、要件一覧と評価表を使った個別相談から始める方法もあります。

  • 価格を最も重視してよいですか?

    CMSは導入後に長期間利用します。初期費用だけでなく、運用工数、保守、更新依頼、将来改修を含めた総費用を評価してください。

まとめ

CMS選定は、製品の機能比較ではなく、自社の運用要件を評価基準へ変換するプロセスです。目的・課題、運用体制、優先順位を整理し、同じシナリオと同じ費用範囲で比較することで、導入後のミスマッチを減らせます。