CMSはWebサイトの簡便な更新を可能にするシステムで、オンプレミス型とクラウド型に大別されます。既にオンプレミス型でCMSを運用している場合、クラウド型に移行すべきか検討中の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回の記事では、企業がオンプレミス型、クラウド型いずれかでCMSを運用するにあたって着目するべき判断材料について解説いたします。
 

この記事のポイント

  • オンプレミス型CMSは開発にはコストと時間がかかるもののカスタマイズ性が高いのが特徴
  • クラウド型CMSはカスタマイズ性に制限はあるもののスムーズな導入と高いレベルのインフラが利用可能
  • オンプレミス型、クラウド型のどちらにするかは「作成したいWebサイト」「社内リソース」から判断する

オンプレミス型CMSの特徴

オンプレミスとは自社環境内にサーバーやネットワーク回線、ソフトウェアを設置し、管理する運用形態で、「オンプレ」とも略される。

プレミス(premises)には、本来「建物」や「敷地内」といった意味があります。オンプレミス(on-premises)はそこから派生したIT用語で、自社環境内にサーバーやネットワーク回線、ソフトウェアを設置し、管理する運用形態で、「オンプレ」とも略されます。クラウドが登場する以前はオンプレミス環境を自社で構築し、そこにCMSをインストールすることが一般的でした。インフラの購入が不要で廉価に利用できるレンタルサーバも広く利用されていました。

オンプレミス型CMSの導入は専門知識が必要となるため、一般的に外部のWeb制作会社が行い、その開発プロセスは「①:汎用性のあるパッケージ製品をカスタマイズしていく」「②:ゼロベースで仕様を決めていき、システムを作り上げていく」の2パターンが一般的です。
 

オンプレミス型CMS導入のメリット

まず、オンプレミス型CMSでは、インフラ(サーバ・セキュリティ)の選定・構築を行わなければなりません。その際には、自社に必要なスペックやコストパフォーマンスなど総合的に見て決定する必要がありますが、妥当性の判断には専門知識が求められるため、最終的にはコスト優先で決定してしまいがちです。

サーバ環境を自社で調達するということは、機器の障害が発生した時にも、自社で何らかの対策を立てる必要があるということです。障害発生後、即時対応するためには、障害検知の仕組みの導入や外部ベンダーとのシステム監視の契約を結んでおく必要があります。しかし、こうした「万一の備え」もコストが優先されれば対策範囲が縮小され、障害復旧にかかる時間も延びてしまうことにつながるのです。

また、上述したようにオンプレミス型CMSはカスタマイズ性が高いぶん、新規開発においては、希望仕様を策定し、予算とスケジュールに収まるように社内外の長期に渡る調整業務が発生するため、所管部門の担当者は長期間のプロジェクトマネジメントを強いられることになります。運用予算に関しても、後から見つかる“バグ”の修正対応など、想定外の改修や障害対応などがスポットで発生しやすいため、保守にかかる人的リソースの確保が必要となるほか、コストハンドリングがしづらい点も懸念事項です。
 

クラウド型CMSの特徴

クラウド型CMSとは、Google社が提供する「Gmail」などをはじめとした一般的なクラウドサービスと同様に「インターネット経由で提供元が既に開発した機能をサービスとして手軽に利用できる」ことが特徴のCMSです。

クラウド型CMSで提供されるシステムは多くの場合、特定の目的に合わせて開発された“完成品”、もしくはオプションを組み合わせるなどして利用でき、支払いに関しては「月額課金」「従量課金」のモデルがほとんどです。
 

クラウド型CMS導入のメリット

クラウド型CMSは、Webサイトの多様な目的、規模に合わせて様々なものがあります。基本的にサーバ・インフラ環境を自社で用意する必要がなく、CMSは最初から使える状態で提供されるため、ゼロからの開発が必要なオンプレミス型CMSに比べ、導入までのコスト・スケジュールを圧縮できる点がメリットです。

また、想定外のコストが発生しやすいオンプレミス型CMSとは異なり、わかりやすい料金体系でコストハンドリングがし易い点もクラウド型CMSを選択する理由のひとつでしょう。

クラウド型CMSでは、ほとんどの場合、インフラ環境の保守・運用も提供元のベンダーが行ってくれます。サーバのスペックやセキュリティ対策に関する仕様、障害発生時の対応方法など、あらかじめサービスとして固められていますから、自社のサイトの目的に最適なものを選ぶだけで「対策」は完了。オンプレミス型CMSのような仕様検討の手間や保守の心配をする必要もありません。
 

クラウド型CMS導入のデメリット

クラウド型CMSは前述したように完成品のシステムであるため、オンプレミス型CMSに比べると、自社が希望する機能・仕様カスタマイズする自由度は高くないと言えます。導入後に、追加のニーズが発生しても、オンプレミス型CMSのようにコーディングや改修による仕様変更には制限があると考えたほうがよいでしょう。
したがって、クラウド型CMSを選択する場合、自社のサイト運営に関する方針をしっかりと定めることが重要で、運用体制も「クラウド型CMSの仕様に合わせる」スタンスで利用することが必要です。
 

オンプレ型CMSかクラウド型CMSかは結局どちらを選ぶべき?

オンプレミス型CMSはカスタマイズ性を前提に、目的に合わせた機能開発を行えることが特徴。クラウド型CMSは目的に応じて選択することで、完成されたサービスとして利用するため、スムーズな導入・運用が可能。

企業組織がCMSを導入するにあたって「オンプレミス型か?」「クラウド型か?」を判断するためには、これから構築していく新しい「Webサイトの目的」と、その「運営体制」について、しっかりと方針を固めておく必要があります。

クラウド型CMSの導入が推奨されるシチュエーション

どのようなWebサイトを構築するにしろ、「仕様はシンプルに」「複雑な開発はしたくない」と考えるはずです。したがって、新しいWebサイトの目的や運営体制が決まったら、まずは方針に合ったクラウド型CMSがあるか調査していくとよいでしょう。策定した方針や求める機能にぴったり合うクラウド型CMSが見つかれば、便利な機能やインフラ環境を手軽に導入することができるためです。

前述の通り、クラウド型CMSはカスタマイズの自由度が期待できません。したがって、目的に合致したクラウド型CMSに、運営体制をサービスに合わせていく判断ができるかどうかが重要になります。いわば自社が「クラウド体質」かどうか、が問われるのです。この点、元々オンプレミス型CMSを導入していた場合は、改修や保守の煩雑さなどの体験から生まれる課題意識から、自ずと「クラウド体質」になっていると言えるかもしれません。

また、会社としてDX推進を掲げている場合、クラウド型CMSの検討は不可避と言えるでしょう。コロナ禍を発端としたテレワーク推進などもあり、社外の環境からでもWebサイトを更新できる運営体制を整える意味でも、クラウド型CMSは最適といえます。
 

オンプレ型CMSの導入が推奨されるシチュエーション

Webサイトに求める必要機能が詳細に決まっていて、独自開発以外の選択肢が無い場合はオンプレミス型CMSの導入が視野に入るでしょう。例えば、自社の基幹システムにある製品データベースとWebサイトの製品ページを連携して表示させる、などです。

前述の通り、オンプレミス型CMSの導入では自社でサーバ環境も含めて構築し保守も行う必要があります。社内外の保守体制を維持するための人材やリソースが確保できるか、あるいは、確保し続けられるかどうかが重要になります。

加えて、カスタマイズ性が高いオンプレミス型CMSの利点を十分に活かすためには、運営チーム側にも幅広い知識とスキルが必要になります。この場合、Webサイト「専任」の担当者か、外部ベンダーから社内に常駐してもらうなどの体制を長期に渡って維持する必要があるため、人材確保の見通しが立つ状況かどうかも極めて重要な判断材料です。

オンプレミス型、クラウド型、どちらを選択するにしても、目的や方針が定まらぬまま決定してしまうことで、仕組みに振り回され、情報発信の速度や精度が落ちてしまう結果を招きかねません。「これまでのWebサイト運営」ではなく、「これから、Webサイトをどのような運営体制で、どう活用していくか」を含めて考え、自社にとっての最適解が何か、正しく判断できる準備をしておきましょう。
 

クラウドCMSが企業サイト内製化のカギ

まとめ

オンプレミス型CMSはカスタマイズ性を前提に、特定の目的に合わせた機能開発を行えることが特徴です。一方で、クラウド型CMSは目的に応じて選択することで、Webサイト運営に必要な機能を完成されたサービスとして利用するため、比較的スムーズな導入・運用が可能になります。

それぞれ、デメリットも存在します。「オンプレミス型は開発・運用には時間的・予算的なコストが必要」「クラウド型CMSはカスタマイズが自由にできない」など、自社で導入を検討する際には、まず構築しようとしているWebサイトの目的、それを運営する体制を考慮に入れる必要があります。その上でまず、クラウド型CMSの比較検討することで、目的のWebサイトを最短距離で構築できる可能性が見いだせるはずです。従来の体制や仕組みにとらわれず、先々を見据えた最適なCMSを選択しましょう。